2Wの灯りについて 13
私のつくる灯りは
ほとんどが2W(ワット)で設計されています。
電球が60w(ワット)だとしたら
その30分の1の小さなあかりです。
なぜ電球よりもずーっと小さな
2wの灯りにこだわってきたのか
これまでちゃんと残していなかった気がするので
あらためて書いてみたいと思います。
私はLED照明がずっと苦手でした。
10年以上もLEDに関わっていながら実は、
ずっとLEDの光が好きではありませんでした。
ハッキリ言えば大嫌い。
同じように感じている方、多いですよね。
LEDの、あのチクチクとした光。。。
目に刺さるような、LEDのまっすぐ伸びる光。。。
なごみを感じないし、どうしても好きになれない。
しかも、LEDを見ていると必ず頭が痛くなってしまう。
・・・これは今も変わっていません。
性質のようなものなのでしょうか。
そんな私が5年前、LEDのデザインを始めたのは、
チクチクとんがった光を何とかして
好きになりたかったからでした。
LEDの光は嫌いだけど、でもものすごくecoで、
米粒大の小ささでデザインの可能性は無限大。
LEDは技術的・デザイン的にはすごくいい子なんです。
好きではないけどずっと気になる存在でした。
5年前、デザインを考え始めた当初、
フォルムや配光をつくるいわゆるデザイン、というよりむしろ
さまざまな光空間の中で過ごす”人体実験”を
繰り返していたにすぎません。
しかしその頃やっていた人体実験が、
後々、徐々に意味を持ちはじめたのです。
実験のために自力制作したラボ。1年半掛かりました
床は廃材。壁は照明効果を意識して左官で仕上げ
ニッチ・壁面照明・各種間接照明・棚下・エッジライト・スポット
などなど 思いつくものはすべて盛り込みました
真冬はストーブ&練炭を焚きながら作業に没頭しました
初めて灯りが入る。感動でしたね。
当時は実験といっても私ひとりしかいませんので
全て自分の身体を使う人体実験。
この角度から光照射すると頭が痛くなる、、とか
この光ならなごんで眠気を感じるよね、など
企業や大学のアカデミックさとは程遠い
笑っちゃう類のものでした。
が、、取りつかれたように
実験を繰り返しました。
実験テーマを100以上並べて向き合いました。
大雪の夜も実験していました
夜な夜な一人で実験を繰り返すというシチュエーションが
とにかくバカバカしくて楽しかったのと
光によってこんなにも感じ方が変わるんだということに
新鮮な驚きもあって、
毎夜毎夜、灯りを作っては実験を繰り返す日々。
それを1年半くらいやっていましたかね。
我ながらよくも飽きずにやっていたものだな、と笑
途中から、そんな私を面白がってくれる人がポツポツ出てきて
企業の開発者が見学に来て意見交換したり、
大学の先生たちが各地から集まって
実験小屋でまさかのシンポジウムを開いたり。
そんなおかしな展開が続きました。
ありがたいことに 今もラボには面白い方が集まります
普通、企業や大学で行う実験・研究は
こと灯りに関して言えば特に、
仮説をもとにそれを証明するための
モニターテストを行うのが
常ですが
実験も短時間なものがほとんどで、
その空間で長期間すごしたり
何日も掛けて光の効果を体感したりなんて、
どこもやっていないそうです。
研究者やデザイナーがやりたくても、
様々な大人の事情?で
できない、というのが本音のようですね。
だからコアな関係者ほど、
光空間で”長時間過ごす”という行為に
興味があるのだと思います。
さまざまな事情があるにせよ
本当に課題を解決しようとするならば
やってみなくては。
とことん、向き合わなきゃ!です。
つじつまを合わせるだけの実験なんて
意味ないですから。
本当に大事なのは
本当に、そうだってことを
示すことなのかな、と思っています。
私の場合、いろいろな実験の経験から
2Wの灯りたちを作るに至りました。
照明の明るさは、いったん明るいものを作ってから
徐々に引き算して作っていった結果です。
私がはじめて好きになった(かも知れない)LED、
電球型のLiLi(ライライ)です。
見た目、ギミックで不思議な灯りです。
アイキャッチになりますよ!
いつもそれ以上のセールストークはしません。
そこから先は使ってくださる方が
感じることですから。
今日は書き始めたので
もう少しだけ。
私は光をツークッションさせることを
意識しています。
光をいったん木にぶつけて反射させ(ワンクッション)
次にアクリルの彫刻や他の素材に
ぶつけて拡散させる(これでツークッション)。
違う方法もありますが。
このように光の反射・拡散をうまく使うと、
頭が痛くならなかったのです
眺めていても嫌な感じがしなかった、
チクチクしなかったのです
論理を追わず、感じることだけを優先して
子供のような感覚で作った2Wの灯り。
この感覚が、すべての人に当てはまるとは
思いません。
しかし、
LEDが苦手な片頭痛持ちの私が
大丈夫な灯りであることは
間違いありません。
・・・長々と書いてしまいいささかの罪悪感、、
・・・これからも、小さな間接照明を
作り続けていきたいと思っています。
最終的に目指すはこの灯り。
心の芯から温まるような。
まだまだ先は長いです。